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大阪高等裁判所 昭和49年(ネ)1580号 判決

控訴人

北川義平

右訴訟代理人

蝶野喜代松

被控訴人

北川源太郎

外八名

右訴訟代理人

中殿政男

被控訴人

大淀町西部農業協同組合

右代表者理事

辰巳頼一

被控訴人

吉野相互木材協同組合

右代表者理事

松本静雄

被控訴人

北川源次

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、当事者の求めた裁判

1  控訴人

(一)  原判決を取消す。

控訴人に対し、原判決添付別紙目録記載(一ないし三〇(ただし、二八の家屋番号を五〇番に訂正))の物件について、控訴人の奈良地方法務局下市出張所昭和二八年二月七日受付第九三号抵当権設定登記に対する。

(1) 被控訴人北川源太郎は、右一ないし一五、一七ないし二六及び三〇の物件について同出張所昭和三二年七月四日受付第七七五号、同二七ないし二九の物件について同出張所昭和三二年六月二五日受付第七四〇号、

(2) 被控訴人北浦マスエ・北浦信博・同北浦千恵子は、右一六の物件について同出張所昭和三二年七月四日受付第七七五号による各抹消登記の各回復登記手続をせよ。

(二)(1)  被控訴人山口博・同松本静雄・同水井伊三郎は、右一ないし五及び一二、一三、

(2)  被控訴人今西隆義は、右九ないし一一及び一五、一七、二二ないし二六及び三〇、

(3)  被控訴人大淀町西部農業協同組合・同北川源次は、右二八及び二九、

(4)  被控訴人吉野相互木材協同組合は右六、七、九ないし一一及び一七ないし二七

の各物件について第一項の回復登記手続をすることを承諾せよ。

(三)  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人今西隆義

主文と同旨。〈後略〉

理由

当裁判所の判断は、次に付加・訂正するほか原判決理由説示のとおりである。

一原判決一三枚目裏六行目の「原告」から一四枚目表九行目までを、「控訴人は、同被控訴人が訴外三起精麦株式会社の登記手続に関与した際、実印を預つていたのを幸いにこれを冒用したものであると主張するが、この点に関する控訴人の原・当審各供述(各供述の間に矛盾がある。)のみをもつて直ちに前記推定を動かすに足りない。」と改め、同一五枚目表六行目の「これ」の前に「原・当審で」を加え、同一六枚目裏九行目の「原告」から同一七枚目表五行目まで、及び同一七枚目表八行目から同一七枚目裏四行目までを共に、「本件抹消が控訴人の承諾の下になされたものであることは前記認定のとおりである。(同被控訴人らは右事実を主張しているものと解する。)」と改める。

二原判決一七枚目裏六行目から一二行目までを次のとおり改める。

(一) 抵当権者甲が、抵当権設定者乙に対し抵当権設定登記の抹消登記の抹消回復登記の請求(A請求)、登記上利害関係ある第三者丙に対し右抹消回復登記の承諾の請求(B請求)をする共同訴訟において、乙は、右抹消登記は甲の意思に基づく旨の抗弁を主張し、丙は、右抗弁を主張しないが、右抗弁と牴触する行為を積極的にしていない場合、乙の右抗弁を採用してA請求を棄却するとき、乙の右抗弁主張の効果が丙にも及ぶものと解し、同時に、B請求を棄却すべきであると解するのが相当である。けだし、A請求とB請求とは、A請求棄却の判決が確定すれば、その判決の反射的効果がB請求において丙に有利に及ぶ関係にあるから、上記の結論は妥当であり、上記のように解しても、甲に不意打を与えるおそれはなく、丙の意思に反することもないからである。

(二)  右(一)の見解は、「共同訴訟人とその相手方との間の請求相互の関係から、当然に補助参加の理由の認められる場合は、特別に参加申出をしなくても、補助参加関係を認めるべきである。」とする説(兼子一・民事訴訟法体系三九九頁)を採用するものではないから、右の説を否定する最高裁判所昭和四三年九月一二日第一小法廷判決、民集二二巻九号一八九六頁に牴触しない。

(三)  右(一)の見解は、「一人の共同訴訟人がある主張をし、他の共同訴訟人が、これと牴触する行為を積極的にしていない場合には、その主張が他の共同訴訟人に利益なものであるかぎり、この者にもその効果が及ぶと解すべきである。」とする説(新堂幸司・民事訴訟法四八〇頁)を採用するものではない。右(一)の設例の場合についてみても、右の説に従えば、乙が抗弁を撤回したときでも、いつたん丙に及んだ抗弁主張の効果はそのまま存続することになり、丙不知の間に(丙欠席の場合)、右抗弁存続を前提とする審理がなされ、結論的には右抗弁不採用・丙敗訴となる場合(丙の意思に反しないといえない場合)も生じる。この点においても、右の説と右(一)の見解とは異なる。

(四)  本件において、被控訴人北川源次(本件抵当権設定登記の抹消登記後に被控訴人北川源太郎から抵当権設定登記を受けた者)は、原審以来、口頭弁論期日に出頭せず答弁書その他の準備書面も提出しないが、控訴人、被控訴人源太郎、被控訴人源次は、それぞれ右(一)の設例の甲、乙、丙に該当し、前認定のとおり、本件抹消登記は控訴人の意思に基づく旨の被控訴人源太郎主張の抗弁を採用し、同被控訴人に対する抹消回復登記請求を棄却するのであるから、右(一)の法理により、同被控訴人の右抗弁主張の効果が被控訴人源次にも及ぶものと解し、同被控訴人に対する抹消回復登記の承諾の請求を棄却すべきである。

三よつて、原判決の結論は正当であるから、本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担について民訴法九五条・八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(小西勝 入江教夫 和田功)

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